「無意識」

月曜日の6:00 a.m.に目覚まし時計がなった。寝足りない体で右手を伸ばす。手探りで音を止めた。まどろみの中4回伸びをしてベットから這い出た。雨の音がする。少し肌寒いが1月末にしては優しい方だ。バイト開始まで15分しかないので、洗面所に行きコンタクトを付け、靴下と靴を履いた。


夜の帳も上がらない内にアパートを出て、水溜りを闇雲にかわしながら走る。集合場所に着くとその日のバイトリーダーに目も合わせずに名前を伝えて、更衣室に入った。S、M、Lと幾つかのサイズのバイト着が入った衣装ケースを無造作に開けて必要な分を床に投げそれを身に纏う。


自分が乗るべき車を見つけて乗ろうとすると右のドアが壊れているから左から乗ってくれと言われた。どうやら今日はこの車の7人で仕事をするらしい。奇遇にも仲のいい後輩くんと同じだった。片道2時間で言葉が発せられたのは運転手からのシートベルトの確認だけだった。後輩くんとしゃべることもない。


そんなサイレント車の目的地は地域の小学校だった。そこには既に10人くらいの職人がいた。車から降りた瞬間にヘルメットを支給され、着用の義務が課された。そして、言われるがままにぶかぶかのあご紐で建物に入った。そこは、物語の世界にでてくる王道の仕事場だった。ヘルメットのライトを付けてチョウチンアンコウのように獲物を探すおっちゃん、大きな声を張り上げながら指示を出すマスコットのようなおじさん、イケボで後輩をいびる典型的ないじめっこ兄さん。各々が各々の役目を果たしている。見慣れないそんな風景に少し愉しくなった。何だかマスコットおじさんのことは皆んな苦手らしい。後輩くんも苛々していた。でも、それのおかげでメガネをかけたコナンくんの様なバイトの子と仲良くなった。人は共通の敵を前にしたとき一致団結するらしい。


あれこれしている内に気が付けば帰りの車に乗っていた。行きと変わらず発せられた言葉はシートベルトの確認だけだが、なぜだか少し安心感がある。今日の仕事が無事終わったからかもしれないし、周りの人たちと少し仲良くなったからかもしれない。